2019年10月20日日曜日

世界水草レイアウトコンテスト2019応募作品ご紹介(上野)

こんにちは、店長の上野です。昨日は新潟にてネイチャーアクアリウムパーティーが開催され、世界水草レイアウトコンテストの上位作品が初公開されました。
私も店頭に設置したディスプレイでライブ配信を見ていたのですが、今年も素晴らしい作品がたくさんありましたね! コンテストブックでゆっくり眺めるのが、今から楽しみです。
ところで、ADAからの公式発表が終わり、個人による作品の公開が可能になりました。さっそく、私の今年の応募作品を紹介したいと思います。


作品タイトル:彩雲
世界ランキング:45位(入選)
水槽サイズ:120×45×45(㎝)
照明:ソーラーRGB×2台、グラッシーレディオ・RS122FUV、ヴォルテス 9時間/日
濾過:エーハイムクラシック2217
CO2:4~5滴/秒
底床:アマゾニア・ノーマル
肥料:オリジナル液肥・ワンダーグリーンを10~20㏄/日(水草の成長度合いによって調整)
生体:カージナルテトラ、ヤマトヌマエビ
水草:グロッソスティグマ、ヘランチウム・テネルム、リシア、インディアンクラッスラ、パールグラス、グリーンロタラ、ロタラ・ワヤナード、ロタラsp.オレンジ、ロタラsp.ピンク、ロタラsp.イエロー、ロタラ・福建省、ロタラ・ワリッキー、ロタラ・ナンセアン、ロタラ・スパイキー、ロタラsp.ミニゴールド、ロタラ・マクランドラミニ“バタフライ”、ロタラsp.ミニゴールド、ポゴステモン・ダッセン、ポゴステモン・エレクタス、ルドウィジアsp.スーパーレッド

〇構図について
今年は三尊石組をベースに組もうと最初から決めていました。去年の応募作は36位と大健闘だったのですが、レイアウト素材の存在感が薄く、ただ土台として山水石を使っただけでした。

世界水草レイアウトコンテスト2018:36位「桃源」

有茎草をふんだんに使った、私の得意なスタイルではあるのですが、骨格となる構図組の甘さを痛感した作品でした。よく言えば水草の美しさを楽しめるレイアウトですが、悪く言うなら石が目立たず、迫力に欠けるレイアウトです。
そこで、今回は石組が際立って迫力があり、尚且つ水草との調和がとれたレイアウトを目指すことに。

〇レイアウト素材
今回は黄虎石(気孔石)を使用しました。色鮮やかな水草と馴染みやすい暖色系であることが主な理由ですが、丁度良いサイズの親石を入手できたことも大きいです。石の組み方について書くと非常に長くなるので、今回は割愛します。

〇魚
色鮮やかな水草に負けない鮮やかさを持ち、流れるように群泳することから石組とも相性の良いカージナルテトラを選びました。王道ですね。

〇水草
今回はロタラ系を中心に、計20種類の水草を使用しました。特に今回大きなポイントになったのが、前景~中景に使用したリシアです。最近はあまり使われなくなってしまいましたが、こんもりと茂った緑の絨毯が気泡をつける様子は今見ても美しいです。(写真撮影時はCO2の添加を止めているので、気泡はついていませんが)

〇日常管理
毎日の液肥添加と一週間に一度の水換え、2~3週間に一度のトリミングが基本的な管理です。当店オリジナルの液肥・ワンダーグリーンは総合肥料なので、基本的にはこれ1本で十分です。あとはトリミング直後にグリーンゲイン・プラス、水草の調子を見て窒素不足ならADAのブライティ・ニトロを添加する程度です。“窒素はコケの元”という先入観を持っている方が多く、コケが出にくいカリウム主体の液肥しか使わないという話もよく聞きます。ですが、実際には水草が要求する窒素の量はかなり多いです。(私のレイアウトのように水草を大量に使う場合は特に)
コケの発生ですが、適切な量を使えば問題ありません。私は水草を元気に美しく育て、長期維持を可能にするには窒素系の肥料を上手く使うことが必要不可欠だと思っています。アマゾニア・ノーマルのような栄養豊富なソイルは窒素分を多く含むので、しばらくはそれだけで何とかなります。しかし、三か月もすると窒素が切れ、徐々に水草の勢いがなくなります。これをリセット時期ととらえず、固形肥料や液肥で上手く追肥して、長期維持を目指しましょう。

〇ちょっとしたテクニック集

・両サイドのガラス面への映り込みを意識する
写真コンテストを意識したテクニックです。例えば、今回の私のレイアウトは、両サイドの石をピッタリとガラスにつけ、左右に岩が連なっているように見せました。これによって、左右に広がりを持たせることができます。また、隙間が空いていると、石の後ろにある下葉の落ちた有茎草が映りこんでしまうので、それを防ぐ意味合いもあります。(前からは隠れていても、ガラスには映りこんでしまいます)


・盛り土は有茎草を延命させる
私はかなり派手に盛り土をします。単純に、光源が近い方が水草が元気に育ちますし、下葉をあまり落とさずに済みます。トリミングの間隔が短くて大変に思うかもしれませんが、下葉が落ち、硬化してスカスカになった茎から新芽を展開させる方がよっぽど難しくて大変です。


参考までに、左サイドから。かなりの高さまで盛り土しているのがわかりますね。でも、実は最初からこの高さまで盛り土していたわけではありません。
私が良く使う方法なのですが、水草の下葉が落ち始めたら、その部分を埋めるようにソイルを上から足してしまいます。石や流木によってある程度の土留がされていることが前提ですが、茂った水草自体がソイルを堰き止めてくれるので、前面への流出もほとんどありません。そして、新しいソイルは水草に栄養を与えてくれます。
盛り土しすぎると底床内に嫌気層ができて~なんて話もよく聞きますが、立ち上げて2年近く経つ、2018年応募水槽にこれといった問題は起きていません。もちろん、ADAのパワーサンドや軽石による底上げも良い方向に影響しているとは思いますが。





即効性を求めるなら液肥をシリンジで底床に打ち込む
ソイルの栄養が切れたら上手く追肥しましょうというお話をしましたが、固形肥料と液体肥料、どちらがいいのでしょうか。
結論から言うと、それぞれ特性が違うので、併用、使い分けが理想です。固形肥料は遅効性のものが多く、水中に溶け出しにくいのでコケが発生しにくいです。半面、「今弱っている」水草に対する即効性はありません。液体肥料はその逆で、即効性がある代わりに持続性がなく、毎日必要な分を添加する必要があります。また、直接水中に添加する為、入れすぎるとコケの発生を招きます。
ところで「今弱っている水草」に「即効性」があって「コケ発生のリスクが少なく」、「ピンポイント」で添加する方法があります。



シリンジで液体肥料を直接底床に打ち込む方法です。私は頂芽の白化が見られる有茎草にこの方法を使いますが、効果抜群です。ぜひお試しください。

まだまだご紹介したいテクニックは色々あるのですが、今回はこのあたりで。

〇反省点
親石周りに赤や黄色の水草を配植したせいで、親石の輪郭がぼやけています。「親石周辺はグリーンロタラやパールグラス等、緑一色でまとめた方が良かったね」と応募写真の撮影後に武江から指摘されました。(武江は作り手の意志を尊重する為、完成まで口出ししません)
リシアも、それ自体は綺麗なのですが、茂りすぎて石を隠しています。もう少し刈り込むか、前景はグロッソだけでも良かったかもしれません。
「どうしても親石の表情がイマイチですね」というのは撮影してくださった石渡カメラマンの言葉。たしかに……。今年もやってもらいました、秘技「ダメな親石を魚群で隠す」
さすがの撮影技術。ありがとうございました。

〇作品タイトルについて
今回の作品タイトル「彩雲」には二つの意図を込めています。
彩雲とは、雲が虹色に染まる自然現象なのですが、リシアや色とりどりな有茎草の茂みをこれに見立てました。これが一つ目。
彩雲はまた、仏教の世界では古くから吉兆として捉えられてきました。例えば『来迎図』には菩薩を伴ってやってくる阿弥陀如来と共に、この彩雲が描かれています。さて、故・天野尚氏がネイチャーアクアリウムに落とし込んだ「三尊石組」は言うまでもなく、本来は仏教由来の作庭技法です。親石に当たるのが阿弥陀如来、残りの二つは菩薩を現わしています。……つまり、彩雲というタイトルに込められた二つ目の意図は、近年コンテストの上位にあまり見かけない「三尊石組」をもう一度盛り上げよう! という私の意気込みです。

以上、少し長くなりましたが、今年の応募作品のご紹介でした。多少の水草の変更はありますが、今も店頭で綺麗に維持していますので、是非、見にいらっしゃってください。



最後に、先ほど三尊石組に対する熱い意気込みを書いた手前、言いにくいのですが、来年は流木を使ったレイアウトでコンテストに応募しようと思います。石組は武江に任せます。来年は私より上の順位を取ってもらいましょう。

上野

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