2021年9月3日金曜日

IAPLC2021(世界水草レイアウトコンテスト)応募作品ご紹介!(上野)

 こんにちは、店長の上野です。
先日順位発表が行われたIAPLC2021(世界水草レイアウトコンテスト)にて、ありがたいことに当店スタッフ全員が入選(100位以内)いたしました!
今回は、その中から私のレイアウトをご紹介したいと思います。

あまり写真が残っていないのですが、立ち上げから時系列順に。


2020.10.19 立ち上げ

今回は全体のシルエットを水草に依存するレイアウトなので、素材はシンプルに流木を3本だけ、放射状に配置しました。
真ん中と右側はUWSのエレファントウッド。左側だけソネケミファのブラックホーンだったと思います。レイアウトで繰り返し使ってきた流木なので、記憶が曖昧で……。出所は違うにせよ、質感の揃った3本です。
他の素材としては、土台としてソイルの中に山水石が埋まっていますが、ほとんど見えませんね。
レイアウト素材による構図骨格だけ見るとかなり寂しく感じますが、水草の植栽スペースを確保する為です。
私のレイアウトはいつも水草が茂りすぎて石や流木が隠れてしまいます。(そういうレイアウトが好きなので)
今回は、どうせ隠れるなら、開き直って水草で骨格を作ってしまおうと考えたのです。ただ、これは水草の育成を失敗するとレイアウトが完全に破綻する恐ろしい試みです(笑)
“私ならできる! レイアウトの上手い下手は置いておいて、水草の育成だけは頑張ってきたじゃないか”と自分に言い聞かせて立ち上げました。


2020.10.24 水草植栽

まだ流木が浮いてしまうので、石を置いて抑えています。
流木を中心に、有茎草各種が放射状になるように植栽。最初からたくさん植えた方が水槽全体の調子も上がりやすいです。
中景にはミクロソリウム、アヌビアス、ブセファランドラ付きの流木や石を配置。前年のIAPLC応募水槽で使っていたものを流用したので、既に中々のボリューム。
さぁ、ここからが本当の戦いの始まりです……!


2021.4.26撮影

斜めから。ロベリア・カージナリスで作った“ライデン通り”がお気に入り。

時間が飛びますが、撮影の一か月前。何回かトリミングを繰り返し、有茎草のボリュームを増している段階です。
糸ゴケが目立ってきたので、思い切ってバッサリ。あと一か月ですが、間に合うと信じて……。


2021.5.20

撮影一週間前、最後のトリミング。
ほぼ完成に近づいていますが、肝心の丸い抜けが未完成ですね。
これは、撮影日に完成するように計算してトリミングしているからです。
この時点で完成させてしまうと、撮影日にはボリュームが出すぎてシルエットが崩れてしまいます。
その場合、撮影前日にハサミを入れて整えることは可能ですが、水草の切り口が見えて不自然です。
元々人工的で不自然なレイアウトではありますが、だからこそ、“作り立て”とか、“撮影日だけ綺麗に整えたレイアウト”といった様な印象を持たれないように……。
この、一週間前のトリミングが一番緊張しました。失敗したら取り返しがつかないからです。
“自分を信じろ、私は有茎の上野だ”と、自分に言い聞かせて臨みました(笑)



2021.5.26 撮影前日

厳しい戦いでしたが、私は勝利しました!
飛び出た水草をほんの少しだけカットして、最終調整。


試しに後ろからライトを当てて撮影してみました。
光が強すぎたので、茂みの薄い部分が白飛びして、円が大きく見えていますね。
さぁ、明日はいよいよ撮影です!

2021.5.27撮影 完成カット

水槽データ
作品タイトル:白月 (読み:はくげつ)
世界ランキング:32位
水槽サイズ:120×45×45()
底床:アマゾニアVer.2
ろ過:エーハイムクラシック2217×2台
照明:ソーラーRGB ×2台、グラッシーレディオRX201Fresh、一般用植物育成LED 1日9時間
CO2添加:1秒2滴×2
撮影者:石渡俊晴さん(アクアライフ誌・カメラマン)

 水草:ニューラージパールグラス、ベトナムゴマノハグサ、アラグアイアレッドシャープリーフハイグロ、スタウロギネ・レペンス、ロベリア・カージナリス、
アヌビアス・ナナ・バリエガータ、ブセファランドラ・クアラクアヤン1、ミクロソリウム・トライデント、
ハイグロフィラ・ロザエネルビス、パールグラス、ミリオフィラム・マトグロッセンセ、レッドルブラ、ルドウィジアsp.スーパーレッド、ロタラ・イエロー、
グリーンロタラ、ロタラ・ナンセアン、ロタラ・ワリッキー、ロタラ・ワヤナード、ロタラsp.オレンジジュース、
ロタラsp.コロラタ、ロタラsp.ベトナムHRA、ロタラsp.レディッシュ

魚:カージナルテトラ、オトシンクルス、オレンジライヤーモーリー、シルバーフライングフォックス

その他の生物:ヤマトヌマエビ、ミナミヌマエビ


☆制作・撮影裏話(長いので、読まなくても大丈夫です)

“水草の育成・トリミング技術が問われるレイアウト”を作ろう、というのが最初に決めたコンセプトです。そんなときに目に入ったのが、IAPLC2020、304位の作品。
https://iaplc.com/gallery/jp/
著作権に配慮して、IAPLCの公式ページを貼るに留めますが、石や流木を使わずに水草だけでカラフルなトンネルを作り上げた面白い作品です。
この作品をヒントに、放射状に展開した後、消失点に向かって収束するように水草を配植しました。
前述の通り、今回のレイアウトは水草の育成を失敗したら、完全に破綻してしまいます。
水草レイアウトにおける構図骨格は、そこでレイアウトが7割決まる※と言われるほど重要な部分ですが、今回は流木・石をあまり使いませんでした。(※8割、9割と言う人もいます)
その為、レイアウトの中で水草が占める面積が多く、上手く育たなければ、構想とは全く別のレイアウトになってしまいます。実際、私の頭の中を覗けるエスパーでもなければ、水草植栽前の画像から完成時のレイアウトを予想することは難しかったでしょう。
それでもあえて挑戦したのは、この大会が世界“水草”レイアウトコンテストであり、また、水草を扱うアクアリウムショップのスタッフとしての意地を見せたかったからです。
結果的に、100点満点とはいかないものの、80点くらいまでは水草の状態を仕上げられたと思うのですが、いかがでしょうか。
-20点分はニューラージパールグラス、スタウロギネ・レペンスが食害から立ち直っていない点、ロタラ・ナンセアンの葉の向きが揃っていない点です。一部のミクロソリウム・トライデントの状態も気に入りません。
食害は、糸状のコケが発生したときに導入したヤマトヌマエビとシルバーフライングフォックスによるものです。
コケが落ち着いた後は隔離し、コケ取り生体に頼らない管理方法に切り替えたのですが、撮影日までに完全回復とはいきませんでした。
ロタラ・ナンセアンに関しては、最初に植えた株の調子がどうしても上がらず、新しいものを植え直したのですが、トリミングの回数が足りず、頭がバラバラの方向を向いたまま、撮影日を迎えてしまいました。
ミクロソリウムは、もう少し下向きに垂れ下がらせたかったです。
その他の水草はまあまあ上手くいったと思います。各種の生長速度や性質に合わせたトリミングを行い、全体が調和する様に努めました。
例えば、生長の遅いロベリア・カージナリスとレッドルブラは差し戻しによって高さを管理。反対に、成長速度の速いロタラ系はザクザクとピンチカット。
アラグアイア・レッドシャープリーフハイグロなんかは、非常に成長が遅く、トリミングにも弱いので、立ち上げて1回しかトリミングしていません(笑)

そうやって苦労して完成させた水景ですが、IAPLCは写真コンテストですから、撮影機材やカメラマンの腕によって、順位が大きく変わります。
その点、私は水景撮影のプロ・アクアライフ誌の石渡カメラマンにお願いしているので安心です。
とはいえ、全てを任せ切るのではなく、画角や水面に当てる風の強弱等は相談します。
今回、画角は広角気味に撮ってもらいました。広角で撮ると迫力が出る反面、やりすぎると不自然な印象を与えます。
故・天野尚さんは超広角で撮影された作品に対して、しばしば苦言を呈していましたね。
ただ、今回のレイアウトはそもそも自然さとは程遠いファンタジックな水景なので、迫力を優先しました。
水面に風を当て、波紋を作るテクニックは多くの参加者が使っていますが、あえて風を当てていません。
今回のレイアウトは中央の白い“抜け”部分が大きなポイントとなりますが、そのシルエットを風によって崩したくなかったからです。
結果として、この選択は大正解で、満月が照らす静謐な空間を演出できたと思います。
カージナルテトラもまるで月を横切る渡り鳥のように、綺麗に群れて泳いでくれました。
……とはいえ、実は撮影し始めは中々カージナルテトラが出てこなくて、石渡カメラマンを苦しめたのです。
曰く、「川島さんの魚は素直ですぐに撮れました。武江さんの魚は良い子すぎて寄って来てしまいます。上野さんのは……。飼い主の性格に似るんですかね?」
ちょっと! 石渡さん! どういうことですか!
……冗談はさておき、今年も素晴らしい写真を撮ってくださって、ありがとうございました。

というわけで、今年も運良く32位という素晴らしい順位をいただくことができました。
直近5年は40→36→45→49→32位と順位が推移しておりまして、過去最高の順位です!
しかし、優秀賞(27位以内)の壁は厚いですね。これからも精進していきたいと思います。


2021.8.30撮影

応募水槽は今も店内で維持していますので、ぜひ、実物を見にご来店ください。
少なくとも9月いっぱいは展示を続ける予定です。
写真だけではなく、生の水景をお見せすることが、IAPLCサポートショップとしての大きな役割の一つだと思いますし、水草の美しさを伝え、興味を持っていただくことが、サポートショップという立場を抜きに、いちアクアリウムショップとしての役割だと考えております。

さて、長くなってしまいましたが、以上、上野のIAPLC応募作品のご紹介でした。
なんだか苦しかった話ばかり書いてしまいましたが、今年もとても楽しく制作することができましたよ!
やっぱり、楽しむことが一番大事ですね。皆様もぜひ、楽しみながらIAPLCに参加してみてください。
もちろん、ご相談もどんどん受け付けます。当店、どのスタッフに質問しても世界ランカーですよ!(笑)



川島淳也のIAPLC2021応募作品『至り』 52位

ところで、いずれ川島の応募作品の紹介もあると思います。(本人に記事を書いてもらう予定)


武江春治のIAPLC2021応募作品『春風』 61位

武江の応募作品紹介は……どうでしょうね?(笑)
本人があまり文章を書きたがるタイプではないもので……。私が聞き取りをして、代筆するかもしれません。

それでは、次回の記事をお楽しみに!

上野

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